第33章 それぞれの覚悟
~ 菅原side ~
試合が始まって、既に立て続けに黒星か。
それも全部、1桁での負け。
さすがに···キッツいよなぁ···
道宮達の顔が険しくなる一方だよ。
桜太さんは、1巡目は紡ちゃんを使わないって言ってたけど、さすがにメンバー入れ替えて流れ変えた方がいいような気もする。
さっき1回だけ、ちょっと紡ちゃんがコートに入った
けど···それはピンサーとしてだし、そのサーブだって白帯に当たって辛うじて向こう側に落ちた感じだった。
紡ちゃん、力んじゃってんのかな?
いつもの紡ちゃんなら、あんな風に白帯に阻まれるとかないのに。
それとも普段オレ達のネットの高さでバレーやってるから、女子の高さに合わせきれてないとか?
澤「スガ。お前その顔、持ち前の爽やかさが抜け落ちてるぞ」
「だってさぁ、紡ちゃんがなかなか出ないから気になるんだよ···さっきちょこっと出たけど、サーブミスりそうだったしさ?」
澤「あれは多分、狙ったんだろ。ピンサーに入る前に桜太さんが紡に何か指示出てたみたいだし、それにあれくらいなら紡は簡単に狙うだろ?」
「そうかなぁ···結構それも練習重ねてないと狙いきれないんじゃない?」
ネットの白帯をピンポイントで狙うとか、例えそれが出来たとしても、その後ボールが向こう側に落ちるとは限らないし。
澤「それが出来るみたいだぞ?」
「マジで?!」
澤「前にちょっと影山に聞いたことがある。紡は、家でサーブ練習する時に反対側のコートに目印を置いて当てる練習してる、とか」
目印···?
たまに影山が体育館でやってるみたいなやつか?
澤「かなりの高確率で当てるみたいだから、さっきのは狙ってやったと言ってもおかしくないんじゃないかな」
紡ちゃん、そんな練習までしてるのに···部活復帰しないのは、やっぱり···
チラッと副審をやってる人間を盗み見る。
···アイツの事を思い出しちゃったりするから、なのかな。
選手復帰したら、きっと女バレだって少しはいい結果残せたりするんだろけど。
そうしたら、それはそれでウチのマネを辞めるってことにもなるし。
あぁ···なんかオレ複雑な感じ。
ー ピーッ! ー
澤「終わったな。また···黒星だ」
審判のホイッスルが試合終了を告げる。
道宮達は、汗を拭いながら···俯いていた。