第32章 不協和音
そう言って武田先生は、行きましょうか?と私の背中に手を当てた。
武田先生?
先生は教え子と呼ぶには何か違うかもって言いましたけど···
体育館で初めて月島君と対立してしまったあの日。
先生は私達に、お互いにちゃんと向き合う方法を教えてくれました。
···結構な荒業でしたけど。
武田先生らしいというか、武田先生じゃなきゃ言えないような言葉で···ちゃんと教えてくれました。
学校か教室か···だなんて、場所なんか関係ないですよ?
誰かが誰かに正しい道筋を辿るヒントを教える。
そんな事に場所なんて関係ありませんから。
今まで出逢ってきた先生という立場の人は、それは親身になってくれる人もいたけど···
でも、武田先生みたいに同じ目線になって話を聞いてくれる人は、初めてだったから。
私が将来、どんな職業に進むかは未知数だけど。
どんな時でも、武田先生みたいに同じ目線で話が出来る···そんな大人になりたいと思います。
ちょっとだけ···天然で。
ちょっとだけ···頼りない所もあって。
だけど、然るべき時にちゃんと言葉を選べて、お日様みたいに暖かく笑える···そんな人に。
『あの···和泉先生』
デスクワークをしている和泉先生の元へ行くと、チラリと私を見て手を止めた。
和「あぁ、やっと来たか。じゃ、相談室へ行こうか」
···相談室?!
武「和泉先生、今はお昼休みで生徒は食事の時間です。長くなる用件であれば、放課後でも宜しいのでは?」
私と同じ事を思ったのか、武田先生がそう提案をした。
和「この子には前回スルッと逃げられてるからね。学校にいなければいけない時間ならば、逃げられる事もない。それに武田先生は、担任でもなければ1年生の担当教師でもない。この件に関しては部外者なのでは?」
ニヒルな笑いを浮かべながら、和泉先生が淡々と武田先生に向けて言葉を放つ。
この先生って、どうしていつも···上から目線でしか言えないんだろう。
武「確かにそうですが、彼女は僕が顧問を担当している部のマネージャーでもありますから、完全なる部外者ではありませんね」
その和泉先生に引けをとることなく、武田先生もまっすぐ目を見て堂々としてるけど。
なんか、普段の天然系なイメージとは違って···やっぱり武田先生も大人なんだと感じてしまう。