第31章 ステップアップへのチャンス
~ 菅原side ~
次のセットが始まって、日向が何度もスパイク打って、音駒のブロッカーに止められる。
何度も、何度も···何度も。
それをずっと見ている烏養さんも、日向をベンチに下げようとはしない。
あの月島でさえ、その様子をチラリと見てはコートに目を向けている。
繋「なんで日向を交代させねぇのかって、言いてぇのか?」
月「···別に」
繋「これが公式戦なら、代えてるかもな。でも、今なら解決策を探すチャンスだ。だが、日向が戦意を喪失してしまうようなら、1回下げた方がいいかもな」
月島に話す烏養さんの言葉を聞きながら、西谷のレシーブのタイミングで走り出す日向を見守る。
それでもやっぱり···ブロックに止められて···
田「クソっ···」
武「ダメかぁ···」
中学最初で最後の試合も完全にシャットアウトされて、高校でも···月島の高さに全然勝てなくて。
それでもやっと手に入れた、自分よりずっとデカい相手と戦う方法。
それがいま、日向を苦しめる。
こんな時、どんな言葉を掛けてやったらいいのか分からない。
頑張れとか、そんな簡単な事じゃないんだ。
旭の時だって···そうだったから。
あの時の旭と、今の日向の姿が重なって胸が苦しくなる。
でも。
これは日向自身が超えなきゃいけない壁なんだと思う。
先輩としての責任逃れとかじゃなくて、日向が自分で考えて···克服しなきゃいけない事なんだ。
コートの中には大地も旭もいる。
頼むぞ、2人共!
日向がベンチに戻された時には、その時はオレが···オレが頑張るから。
本当は、オレも一緒にコートに立ちたいけど。
でも、オレが入るより影山が入ってる方が先があるなら···
そう思って烏養さんに提案したのは自分だから。
だからオレは、オレがここで出来ることを頑張る。
これから先、少しでも長くコートにいられるように。