第10章 月潮と少女 裏
ルルに気持ちを伝えた日、いつも以上に激しく抱き合った。
彼女が今まで俺の気持ちに答えてくれたのが本当に嬉しかった。
今まで考えたこともないくらい、満ちていた。
例え、本によって運命を操作されていたとしても。
だがもう迷うことはなかった。
例え本がなくても、俺はルルに惹かれていただろうし、彼女もそれに答えてくれただろう。
不思議と、そう思えた。
朝日が差し込み、目だけが覚めてしまった。
脳はまだまどろんでいた。
まだ早朝だろうか。カーテンの隙間から白い光がゆらゆら揺れる。
ルルの身体が裸のまま自分の胸元で小さく寝息を立てている。
布団は被っていたが、白く小さな身体が肌寒そうに見え、抱きしめる力を強める。
髪に顔を埋めると、彼女の甘い香りが鼻腔を抜け、ますます眠気が襲ってきた。
が、他の団員が起きる前に、風呂だけでも、と霞んでいく意識に叱咤し、起き上がろうとする。
太腿を撫でると、ぬるっとした感触。
ああ、昨日はやりすぎたな、と笑いながら反省した。
布団をまくりあげ、ルルを起こす。
「ルル、起きろ。風呂に行くぞ。」
と言って隣で寝てる彼女を起こし、抱きあげようと持ち上げる。
ふと血の匂いを感じた。
「…?」
一瞬なんだかわからなかったが、自分の手についている物だった。
と、自分の手を見つめて漸くはっと気付いた。
「ルル…!」
やはり、潮が来ていた。
ルルは俺の声で漸く目が覚め、気だるそうに腕から下りた。
「おはよう。」
と口パクで挨拶し、にこっと笑うが、それどころじゃないことに気付いて欲しい。
寝ぼけている状態で周囲を見渡し、漸く自分が置かれている状況に気付く。
そういえば、この辺の教育は受けているのだろうか。受けていないと若干対応に困る。
あまり騒いでも仕方がないので、シーツを掲げ、ルルの手を引いて浴室に向かった。
「大丈夫か?」
元から食が細いのもあり、貧血そうにふらふら歩く彼女の足取りが不安だ。
「あたま、いたい…。」
と口パクで呟いた。