第16章 研究と私
パーティーが開幕した。
屋敷の大ホールは、本館とは別の、それ専門の建物にある。
大きなシャンデリア、ふかふかの敷物、楽団専用のオーケストラポケットと舞台、場合によってはステージや花道も用意される。
今回は、舞台が設置されており、装飾は少なめのシンプルな会場だった。
母が壇上で話し、拍手の雨が降り注がれた。
一礼すると壇上を降り、弦楽団がしっとりとした背景音楽を静かに演奏する。
人のざわめき、食器同士が鳴らす独特の音、そんな混沌とした音の世界と混ざり合っていく。
母に連れられ、一通りの来賓に挨拶を終えると、漸く解放され、座って料理を食べた。
ボディーガードの彼が料理を何品か皿に用意してくれていた。
「お前も大変だな。」
「慣れていますから大丈夫です。」
行儀よく皿を受け取り、少量の食事を始めた。
あまりにも小さい彼女に、のし掛かる大きな負荷が見える。
食事中も、絶えず彼女と交流を持とうと様々な来賓があった。
張り付いているかのような笑顔で常に接し、相も変わらず母の期待に答えていく。
例え見返りがなくても。母が用事を終えて戻ると、壇上に立たされた。
何故かわからないが、とても嫌な予感がした。
「それでは、これから研究発表を行います。」