第3章 事件の日
アイリーンがリヴァイに弄ばれてから、数日が経った。
あの後、ティーカップセットを洗うと言ってお盆を持ったアイリーンを再度引き留めたリヴァイは
「俺も洗い場に着いていく。」
と言い張り、渋々アイリーンはそれを了承。
洗い場では壮絶な洗い物講座が小一時間開催された。
潔癖症だとは知っていたが、まさか洗い物まであんなに丁寧にしていたとは……。
もしまた紅茶時間に付き合うことがあれば、自分のカップを用意しようとアイリーンは洗い物講座中に誓った。
「アイリーン!この資料を取って来てほしいんだけど。いいかな?」
今日もハンジと共に研究室に籠りながら、アイリーンは助手として働いていた。
ハンジと働きはじめて1ヶ月。
仕事にも慣れてきて、ハンジの扱い方も把握してきていた。
「はい。この資料が必要なら、生物学関係も必要ではないですか?」
ハンジが提示してきた資料リストを見ながらそう告げるが、ハンジから返事はない。
不味いことでも言ってしまったか。
慣れてきたからって出すぎた事を言ってしまったか。
不安に駈られて視線を資料からハンジへと向けると、意外にもハンジはキラキラとした瞳をアイリーンへと向けていた。
「あ、あの」
「素晴らしい!!」
アイリーンの言葉に食いぎみで言葉を被せ、ハンジは両の手を天に向かって突き上げた。
いきなりの行動に、アイリーンの肩がビクッと上がる。
「さすがは私の同志! 君は本当に最高だよ! そうだよね、生物学の資料も必要になるだろう! いや素晴らしい! これはリヴァイに報告しなければ! 私の同志、アイリーンは素晴らしい助手だと! 今すぐに言いに行こうかな。いや、後一時間後にエルヴィンに集まるように言われているから、その時に一番に言おう。うん、それがいいよね。いやー楽しみだなぁ。リヴァイ羨ましいと言うだろうな。欲しいと言われたらどうしよう。それは困るなぁ。」
「あ、それじゃぁ資料取って来ますね。」
「うん。気を付けてね。」
ハンジさんはああなったら止まらない。止められない。
そそくさとその場を後にして、少しだけ資料室で長居しようかなとアイリーンはため息を吐いた。