第37章 音の誘い
リクが寝た事をサスケは確認する。
そして、握っていた手を離し、リクの頬を撫でた。
先ほど渡したのは、即効性のある強力な睡眠薬。
何かあれば必ず、リクは俺を追いかけてくる。
無理やり突き放すしか思いつかなかった。
「お前が言いたかった事、何だったんだろーな。」
言わせなかったのは、俺だ。
リクの話を聞けば、決意が揺らぐ気がしたから。
自嘲気味に笑ったのち、首元からペンダントを外し、リクの近くに置いた。
幼馴染から貰った、大切な物。
側に自分がいなくても、代わりに守ってくれるような気がして。
…側にいるという約束を、守れない自分の代わりに。
「俺、行くよ。」
イタチの言っていた"迷い"。
それは、ここに眠る彼女。
イタチへの復讐か、第七班の…リクの側に居続けるか、知らずのうちに迷っていたのだ。
そして、音の四人衆からの襲撃で、迷いは切り捨てた。
…選んだのは、"イタチへの復讐"
俺は、復讐者だ。
一族の敵。…俺の、幼馴染の敵。
兄を殺すために生きている。
…彼女に悟られなかっただろうか、ちゃんと笑えていただろうか。
そんな事を最後に思い、眠る彼女の額にキスをした。
ふと顔をあげると、病室の机に飾ってある第七班の写真が目に留まった。
「………。」
ナルトと自分がいがみあっていて、真ん中でサクラとリクが笑っていて。
そして、カカシがナルトと俺の頭に手を置き、困ったように笑っている。
ほんの少しだけ、第七班で任務をする内に、皆を家族のように感じ、幸せを感じていた。
けれど、それさえも今日は断ち切るんだ。
…暫く眺めたのち、それを伏せた。
けじめは、つけた。
第七班への想いを、リクへの想いをすべて胸の奥底にしまう。
そしてリクの病室を後にした。
サスケは今日、音の四人衆に誘われ、里を抜けた。