第35章 知ってる
「ソラ、か…?」
イタチがソラと名前を呼ぶ。
確かにソラとリクは瓜二つ。
初対面で見間違える事は仕方のない事だ。
しかし…。
(何故リクがイタチを知っている…!?
やはり記憶の…?それにしては衝動がない、どういう事だ…?)
訳がわからないと、目を大きくする。
立ち尽くした彼女の背を見つめるしかできなかった。
『これが…ある限り、記憶が、なく…ても、…サスケと兄、さんと…繋がってるわ。』
突然にリクはフラリと歩き出し、耳元にあるイヤーカフに手を当てて、ブツブツと話し出した。
「おい!リク!何を言ってる!どけ!俺はこいつを…!」
俺はリクに怒鳴りつけたが、リクは振り返る事もなく、俺の声が届いていないようだった。
更に、ポロポロと涙を流しはじめた。
『今度は…、私が、会いに行くから…。その、時はまた一緒に…団子を、食べようね…。兄、さん、愛してるわ…。』
俺は、何故か手に握られた団子屋の袋をイタチに差し出しているリクの行動が、まったく理解できなかった。
「リクちゃんってば、その眼…!」
「イタチさん…。3つ目ですよ。うちは一族ってのは、たくさん残ってるんですか?」
鬼鮫とナルトが驚いた表情でリクをみていた。
俺も何事かと顔を覗き込む。
そして、2人が驚いていた理由が分かった。
「し、写輪眼…!!」
リクの目は、赤く染まり、勾玉模様が3つ浮いていた。
驚きを隠せずにいると、イタチがこちらへ歩いてくる。
「鬼鮫、無駄な詮索はよせ。」
イタチはリクに近づき、彼女の腹を思い切り殴り飛ばしたのだ。
『うぅっ…。痛い…。』
リクは血を吐き、腹を抱えて蹲った。
その姿に、先ほどまでの疑問は吹き飛び、怒りがさらに増す。
「リクに手ェ出すな!…くそっ!上等だぁ!」
俺は力を無理に引き出し立ち上がるが、全くイタチに歯が立たない。
(あの時から少しも縮まらない…。この差はなんだ…?今まで俺は、何をしていたんだ!?)
イタチに首を掴まれ意識が遠のき、己の力に絶望した時。
はっきりと聞こえてきたのは、やはりリクの声だった。