第34章 デートをしよう
「おいリク!しっかりしろ!」
ごめん、と掠れた声で謝った彼女は、目を少し開いたまま気を失ってしまった。
どこか怪我をしたのか、毒を盛られたのか、色々と原因を考え傷口を探すが見当たらない。
なら……記憶?
けれどそんなもの、今の何で蘇りかけたかなんて分かりもしない。
「…俺はこいつを病院に連れて行く。
お前たちはそこの上忍に状況説明をしろ。
俺の名はうちはサスケ。こいつは…歌神リクだ。」
「歌神リクって…その名前、さっきの奴らが…!」
「俺は行く。あとは頼むぞ。」
母親とその子供達に伝言を託し、病院へと走り出そうとした時だった。
「どーも。うちの部下が大変失礼しました。お怪我はありませんか?」
「カカシ……!」
そう、目の前に現れたのは、担当上忍はたけカカシだった。
「サスケ、お前はこの女性達と事情の説明をしてこい。
リクは俺が病院に連れて行く。」
「…おい、何を勝手に決めている。リクは俺が……。」
「サスケ、さっきの千鳥はなんだ?里の反対側にいた俺ですら気づいたぞ。
千鳥は仲間を守るために教えたはずだ。
さっきのは、リクを守るという皮を被ってはいたが…何か別の理由だったんじゃないか?
お前がまだ自我があり、チャクラのコントロールが出来ていたからけが人が出なかったものの、あの強さは危険すぎだ。
一度リクから離れて頭を冷やせ。」
全てを見透かしたかのようなカカシの説教に、俺は舌打ちをした。
カカシの言う通り、俺は"あの日のうちはイタチ"と奴らを重ねていた。
そして一瞬とはいえ、本気で手をかけようとした。
結果として音忍達は捕らえるだけに終わったが、先の千鳥は、他の人から見れば、まるで恐ろしいものだっただろう。
そんな事、全部分かってた。
カカシの言うことが正しいとも分かってる。
「サスケ…悪いがナルトとサクラを呼んできてくれ。
集合は3時間後、第3演習場の慰霊碑って言えばわかるな。」
嫌だとも言わせない空気を纏うカカシの目線に、思わず目をそらす。
どれだけ反論しようとも、決して意見を変える気は無いと言うことははっきり分かった。
嫌々にリクを託し、俺は瞬身で去っていったカカシがいた空間をしばらく見つめていた。