第34章 デートをしよう
『はーい!サスケならどうぞー!他の人なら帰ってくださーい!』
扉の奥でそう言ったリク。
(ったく、どう言う意味だよそれ。)
そんな言い方をされると変に照れる。
それに、扉を開けてリクを見た瞬間、俺は一瞬固まってしまった。
空色のワンピース。
今日の夢で見たのと、同じ空色。
そして、笑うリク。
自分の顔に、少しの熱が集まる。
なんて綺麗なのだろうと、素直に思った。
けれどそれは自分の口から発せられることはない。
「アホかお前。」
いや、別にそんなことが言いたいわけじゃない。
『アホって何がよ!』
まあ当然の反応だな。
「その……いや、なんでもない。」
だから、なんでもないんじゃなくて。
『なんでもないって一番気持ち悪いのよ!
このウスラトンカチがっ!』
「誰がウスラトンカチだ。」
そこまで言い合って、俺は小さくため息をついた。
不快な気分になんてなる事はないが、もし俺が素直なら、こういう事はなくなるのだろうか。
それはそれでつまらないが。
『サスケ、いつも通りだね。』
「あ?どこ見てそんなこと言ってる。」
いつもと違うだろ、ちゃんと見ろよ。
けれど、リクは首をかしげるばかりで、おまけに少しため息をついた。
ちがう、そうじゃない。
今日はお前のことをもっと知りたいんだ。
もっと、笑って欲しいんだ。
「……あの、だな。」
『な、なんでしょう。』
少し不安げに俺の顔を覗くリク。
目線を交えただけで、全身が熱くなるのはもう病気なのだろうか。
その視線から何となく外れたくて、俺は自らの顔を手で覆った。
「その服、悪くない。」
『………………。』
無反応なリクを心配し、手の隙間から彼女の様子を伺う。
すると、彼女は俺と同じように顔を赤くして俯いていた。
『……あ、ありがと。』
「……お、おう。」
『じゃ、じゃあ行こうか!』
「そうだな。」
いつもと違うリクの反応に、また自分のいつも以上の感情の昂りに戸惑いながらも、俺たちは町へと繰り出した。