第34章 デートをしよう
木の葉崩しから日は流れる。
三代目を失った木の葉の里は、まだ傷を残している。
しかしそんな中でも、少しずつ立ち直っていくこの里は逞しい。
三代目から火の意志を受け取った忍者たちもまた同じくして。
里の修復という任務に私たちは駆り出され続け、久しぶりに連休をもらえる事になった。
任務も今日は終わり、2人でのんびりと歩いていた。
『サスケ!明日何しようか!』
「何って…修行だろ。」
当然の事のように返された言葉に少しだけ顔をしかめる。
『そうね、修行も大事。…だけど、えっと……。サスケのバカ…忘れちゃったの?』
「は…?」
本当に覚えていないのだろうか。
実は覚えてないふりをしているのでは?
そんな事も思ったけど、サスケは本当に忘れてしまったらしい。
あの時の約束を。
『…もう知らない。サスケなんて知らないわよ!』
顔に熱が集まり、大声で叫ぶ。
そして私は、サスケを置いて家へと走った。
…冷静になった頭で先の言動をよく考えてみる。
何を私は理不尽な事を、贅沢な事を言っていたのだと。
『でも…約束したのに。次の休みには、一緒にどこかに出かけようって。』
約束とは、中忍試験中の修行期間で交わした約束の事。
初めてのサスケからの申し出だった。
確かに何時も一緒にいるけれど、やはり約束をしたその日は、リクにとっては特別だったのだ。
『デートだって思ってた。勝手に一人で舞い上がってただけだった…。』
本当、一人だけ恥ずかしい。
こんな彼への気持ちなんて気づかなきゃよかった。
何よ、嫌な事ばかりじゃない。
任務の時や修行の時は前の通りにいれるのに、気が抜けるとすぐにこう。
今まで詰め詰めの予定だったから気付かなかっただけだ。
いつだって優しくて強くて、心の広い人でありたいのに。
好きが増えるほど、もっと私を見てと欲が出る。
余裕がなくなる、心が狭くなる。
"好き"という気持ちが、こんなにも心を狂わせるモノだって知らなかった。
どんどん嫌な自分になる。
それが苦しい。
走りながらも涙が溢れ、それは風に乗って横に流れる。
リクは家の扉を荒く開け、靴も放り出し、そのままベッドへ飛び込んだ。
溢れる涙を止めたくて。
泣き声が響かないように枕に顔を埋めた。