第31章 中忍試験・力
医務室には私がやられたヤツの解毒剤はなかったらしく、木の葉病院へと送られた。
そこで苦い薬を飲まされ、毒を抜かれ、点滴を打たれて、病室へと詰め込まれた。
良薬口に苦し…とは言うが、これ程酷い薬にあった事はない。
そう断言できるほど、薬は不味かった。
噛まれたクモは…と伝えると、そりゃあ医者達も顔面蒼白で。
命の危機に晒されたけれど、ここまで来ると、医者達の反応を見るのが面白い。
(別に体調がすこぶる悪い訳でもないのに…。抜け出して会場にもどろっかな…。)
病室にいるのは退屈なのだ、これはいい考えではないか?
そう思い、腕につながれた点滴を持ったまま出口に向かう。
「こら!歌神さん!勝手に病院から出て行かないで!」
『あ、あはは…すみません。』
正面玄関から出ようとすると看護師に止められてしまい、大きく息を吐く。
やはり正面突破はダメか。
とは言っても、私の病室の窓は自分の意志では開ける事ができないタイプのものだ。
……病院は暇だ。
何もする事がなく、相手をしてくれる人もいない。
(一人は寂しいよ、サスケ…。)
任務がない休日も、必ずサスケと一緒にいて。
いつだってサスケと共に行動してきた。
サスケが側にいないことが、こんなにも辛いことだなんて。
どれだけ依存してきたか良くわかる。
(……サスケに会いたい。)
隣に彼がいないだけで、ポッカリと胸に穴が空いた気分だ。
無意識に左耳に触れる。
記憶が消えた日から、ずっと外さずに付けているイヤーカフがそこにはある。
これはどこで買ったのか、誰かに貰ったのかも覚えていないけれど、これに触れると人との繋がりを感じる。
その繋がりは親しい人…だったと思うのだけれど、その人を思い出そうと頭痛がする。
『サスケのとこ…いこ。』
頭痛に耐え切れず、思い出す事を諦めてサスケの居るであろう病室へと向かった。