第30章 中忍試験・絆
しばらくの沈黙が続く。
サクラに胸の内を伝えた。
ヒナタにすら、言うのに苦労した言葉を言った。
でも、隠さずに話した。
それはサクラに対しての敬意みたいなものだから。
それよりもハルという人。
なんて懐かしい響きなのだろう。
なぜ、こんなにも苦しくて悲しい気持ちになるのだろうか。
(思い出せない…。大切な人のはずなのに。)
「ハル」という名前を脳内で復唱するだけでこれだけ頭が痛くなる。
…やっぱり思い出せない。
私は、大きくため息をつき顔を伏せた。
「…今まで、サスケくんのことで歪んだりしてゴメン。」
突然、沈黙を破る様にサクラが謝る。
なぜ謝るのだろうか。
サクラは悪いことなんて何もしてない。
今日まで黙っていた私が謝るべきなのに。
『ううん、春野さんはなにも悪くない。私こそ黙っててゴメン。』
「謝らないで?歌神さんのことを羨ましいと思って、勝手に目の敵にしてたのは私だし…。
でも、歌神さんの話を聞いて、なんだか色々とスッキリしたわ!」
サクラは「スタートラインは同じね」と笑う。
前向きな彼女の姿に、目頭が熱くなった。
本音を言えば、サクラとはあまり合わないと思っていた。
修行は一緒にしたけれど、勝手に睨まれたり、ライバル視されたり。
けど、彼女も彼女なりに悩んで、真っ直ぐサスケを想っていたのだ。
それを軽い気持ちだと思い込み、突き放していたのは、こちらの方だった。
それがわかった今、無意識に張っていた心の壁が崩れる。
立ち上がった彼女の背は、先程までより近くに感じた。
同じように苦しんで、同じように努力してるんだっていまは思う。
やっと、本当の仲間になれた気がした。
「今、ナルトもサスケくんも動けない。
いつも守ってもらってばかりだけど、私も3人と肩を並べて戦いたい。」
そう言った彼女はニコリと笑い、こちらを振り返った。
「二人を守れるのは私達だけ。一緒に守ろう。" リク " 」
…初めて名前を呼ばれた。
そのことに驚き、サクラの目を見る。
「なによ…。そんなに見ないでくれる?
恥ずかしいじゃない…。」
『ふふ…ごめん。一緒に守ろう、二人を。…ありがとう。" サクラちゃん "』
リクとサクラは目を合わせ、笑いあった。