第29章 中忍試験・死の森
頭を抱え、サスケが唸る。
目は大きく開いたままで、全く焦点が合っていない。
「……ガァっ!ぐぅおおお!」
その姿を目の前に、リクは立ち尽くした。
守るって言ったのに。
絶対守るって誓ったのに。
どうしてサスケは、苦シンデルノ。
「どうしよう歌神さん…サスケくんが!」
サクラの問いで、我に返る。
どんな事があっても、自我を失ってはならないと、カカシに言われた。
自我を失えば、無意識のうちに仲間を殺める歌だって歌いかねないのだ。
ゆっくり深呼吸をして、サクラに指示を出す。
『……取り敢えずどこかに身を隠そう。
春野さん、サスケを見てて?
ナルトくんを連れてくる。』
サクラに告げ、ふらつく足を踏み出そうとした時。
誰かに服を掴まれた。
…サスケだった。
『サスケ、ちょっと待ってて。すぐ戻ってくるから…。』
そう言って、サスケの手を離させようとしたのだが、その手をサクラに止められた。
「……歌神さん、私がナルトを。」
『…ごめんね、ありがとう。』
サクラがナルトの元に走ったところで、リクは腰を下ろした。
リクの手を求めて彷徨うサスケのそれに、ゆっくりと併せる。
するとその手をサスケは強く握りしめ、さらに大きな声で叫ぶのだ。
首元をみると、先程噛み付かれた辺りに勾玉が3つ、円になったような模様が付いていた。
『…呪印。これがサスケを苦しめてる。』
これだけ叫ぶサスケは、初めて見た。
激痛…という言葉以上の痛みが、彼の体を巡っているはずだ。
前に読んだ本に、呪印の本があった。
特に興味もなかったから、呪印を解く方法までは勉強しなかった。
その事に、後悔する。
最悪適合しなければ、死ぬ。
それが呪印だ。
『さっきはごめんね…。だけど、死んだら許さないから…。』
独りにするなとサスケは言った。
なら私も、独りにしないで。
激痛と戦うサスケの体を、ぎゅっと抱き寄せた。