第29章 中忍試験・死の森
呆然としているうちに、またリクに助けられた。
一時的ではあるが、奴を巻いてくれたのだ。
しかしそれは、彼女の右足という犠牲を伴っての事。
自らの足を、自らで傷つけ、俺たちを救ったのだ。
「歌神さん…!!」
『……大丈夫。』
サクラの心配に、一言で返しているが、表情は苦しそうで。
サクラがリクの足を止血し、応急処置を始めた。
もうリクは、あまり動けないし、動かす訳にもいかない。
「…どう逃げる…。どう逃げればいい…!」
サクラとリクを連れて、あいつからどう逃げればいい?
ブツブツと呟く。
いつもならば、リクに守られてどうこうと思っていただろう。
しかし、目の前の敵から逃げる方法だけを模索する。
自分で冷静さを欠いている事すら分からないほど、取り乱していた。
それを自覚させられたのは、サクラの声を聞いた時だ。
「サスケくん!ヘビ!!」
我に返りその場から離れる。
さらに追って牙を剥くヘビが、さっきの奴を連想させる。
恐怖しかなかった。
「うわあぁぁ!来るなああ!!」
10数枚もの手裏剣をそのヘビに投げつける。
ヘビを殺傷するには多すぎる量だった。
そのヘビの背が、メリメリと音を立てて割れ、ヌルリとあいつが出てくる。
背筋が凍った。
「お前達は一度たりとも気を抜いちゃダメでしょ…。
獲物は常に気を張って、逃げまとうものよ…捕食者の前ではね。」