第21章 波の国・出発
サスケに手を引かれ、リクは歩く。
何かを失う辛さが、何故かよく分かるのだ。
心臓を握りつぶされるような、動悸が激しくなるような。
一度だって、そんな経験した筈ないのに。
…いや、記憶にないうちに、そういう経験をしたのだろうか。
だから、タズナの言い方に、とても腹が立った。
見事に自己中心的な発言だったからだ。
もっと、別の言い方だってあったはずなのに。
これじゃ、私たちは捨て駒だと言われている気がしてならない。
…私はともかく、他の班員をそのような扱いをする事は決して許さない。
(誰一人、欠けることなく里に帰る。誰も死なないように、私がみんなを守るんだ…。)
みんなを守れる力があると、過信している訳ではない。
だけど、それだけの覚悟は必要だと思った。
次にやってくる敵は、きっと先程の何倍も強いのだから。
初めての国外任務、開始早々トンデモない事になってしまった。
任務は必ず成功させてみせる。
しかし、不安だらけ。
何かを失う気がしてならなかった。
この任務、嫌な予感がしてならない。
リクはそんな不安を振り払うかのように気合を入れ直し、サスケの手を握り返した。