第10章 別れ
兄さん…もう、遠くに行かないで!
兄さん、兄さん…
『イタチ兄さん…ッ!!!!』
ハッと目が醒める。
まず初めに目に写ったのは緑。
その後にイタチの姿だった。
『よかった…夢だったのね…。』
「いや、全て現実だ」
イタチの声色は冷静だった。でも、表情は違った。
『…兄さん、泣いてるの?』
イタチは目が腫れていて、涙が頬を伝っていた。
「…痛かったよな。苦しかったよな。刺してすまなかった…。俺が、みんな殺した…。」
イタチが泣く姿をみるのは、はじめてだった。
身体を動かそうとすると、傷が痛む。
しかし、手当済みであった。きっと、イタチがしてくれたのだろう。
『兄さん、私は憎いよ。でもそれは、兄さんじゃなくて、兄さんにこんな事をさせた人が憎い。』
(…ダンゾウ。また、私から奪ったのね。)
辛くて堪らなかったけれど任務を遂行し、ソラを助け、一族を想い涙を流す兄。
そんな優しい兄に、こんなひどい任務をさせたダンゾウは絶対に許さない。