第15章 ガーネット
イニシアチブを潤に取られているようで、居心地が悪い。
でも、そんな空気を潤はとっても楽しんでいるようだ。
「で…?なんで大野さんを好きになったの?」
「なんでって…そんなのわかんねえよ」
わかったら苦労しない。
こんなに苦しいのに、自ら片足突っ込んで…
「まあね…そんなのわかったら苦労しないか…でも、急だよね?なんかあったんでしょ…」
「まあな…」
問われるまま、あのホテルで出会ったことを潤に話してしまった。
「え…じゃあ、大野さんって…」
「ああ。おまえも気づいてなかったの?」
「…わかんなかった…」
「だよな…俺も、わかんなかった」
ぼすっと潤は背もたれに寄りかかった。
「ああ…なるほどねえ…だから、俺、大野さんと仲良くできたんだ…」
「なんだよ。通ずるものがあるって?」
「そうなんだよと思うよ…俺はあの人の才能とか、まるごとひっくるめて尊敬もしてるけどさ…」
持っている缶を見ながら、考え込む顔になった。
「でも…決まった人がいるんだ…」
「まあね…」
「…辛いね…」
「ああ…」
あの時もしも…
飛び込んできた獲物を逃してたら、こんなことにはならなかったんだろうか。