第12章 ピスタチオ scene2
黒いものの中に居た間の和也の記憶はなかった。
もちろん、黒が和也の中に居たこともね。
「ほえ…」
「ま、そういうことだ…今度黒が来たら、めいっぱい遊ぶから」
「う、うん…」
イマイチわかってないようだけど、和也は頷いた。
「ごめん…俺じゃ上手く説明できないから、翔くんにでも…」
「ああ、うん…大丈夫。大体あなたの言ってることはわかるから…」
「え?」
ふうっと和也はため息を付いた。
「もう…何年一緒にいると思ってんのよ…わかるよ…?智の言ってること…」
「和也…」
「そっかあ…俺の中にあん時の光が残ってたのか…」
ぺたぺたと自分のお腹を擦ってる。
「もう、今はないのかな?」
「ああ…そうみたいだな…行長先生がそう言ってた…」
「そっかぁ…俺、もう光ってない?」
いや…おまえ、光ってるよ…
「うわっ…」
和也を抱きしめた。
「く、苦しいってばっ…」
おまえは、俺には光り輝いて見えるんだもん。
「智ってばぁ~…」
「和也…愛してる」
「…ばか…」
そっと和也の腕が俺の背中に回ってきた。
「俺も…愛してる…」
ふうっと息を吐くと、俺の肩にコテンと頭を載せた。
「おかえり…」
「ただいま…智…」
よかった…和也帰ってきた…
腕の中のあったかい身体を、もっと感じたくて
ぐっと抱きしめる腕に、力を入れた
「もうどこにも行くなよな…」
そう言うと、こくんと頷いた和也はぎゅっと俺を抱きしめ返した。
カチコチと時計の音と、和也の心臓の音だけが聞こえる。
「あのさ…和也…」
「ん…?」
俺、決めた。
「セックス、しよ?」
俺たちの初めての夜、今日にしよう
【つづく】