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カラフルⅣ【気象系BL小説】

第11章 珈琲色


その祠に和がやってきたのは、それからひと月後のことだった。

深夜、松明を持った村人に見送られ、和は祠の中に足を踏み入れた。

白い絹の着物に身を包み、頭から被衣(かつぎ)を被っている。

「寒い…」

真冬がもうそこまで来る時期。
広い祠の中は氷室のような寒さだった。

ギイっと和の後ろで木戸が閉まる。

「…和ぅ…堪えてくれや…」

長老の声が聞こえたかと思うと、後は浄闇となった。


足先の感覚はもうない。
和はその場に蹲ると、時が来るのを待った。

「山王さま…申し訳ありません…俺、男なんだけど…」

はあっと息を吐いて手先を温めた。

「でもね…今年はどうか俺で勘弁してください…」

ミシリと和の背後で音がした。

「なんだ…今年は男なのか…」

振り返ると、そこには男が二人立っていた。
和にはみたこともない着物を身に纏っている。

長い袖に、長い裾…
上に羽織っている着物には唐風の刺繍が施してあった。
長い髪は頭頂で総髪に結わえて、後ろに垂らしてある。

「あ…山王さま…?」

和の問いかけに二人の男は答えない。

「どうする…三輪の…」
「どうするといわれてものう…咋(くい)の…」

咋(くい)と呼ばれた男は、そっと和を見た。

「では、今年は我が受け取ろう」
「承った」

三輪と呼ばれた男は煙のようにその場から消えた。

「和…と申すか」
「はっ…はい…すいません!男で!」

深々と床に手をつき頭を下げる。

「我は大山咋神(おおやまくいのかみ)じゃ…」
「はい…」

さらりと薄青の長い袖の腕を伸ばすと、和の頬に触れた。

「美しい」
「え…?」

さらりと手は離れていった。

「山王さまってお二人居るんですか…」
「そうじゃ。そのようなことも知らず祀っておったのか?」
「す、すいません…俺は二親が早くに死んで、じいちゃんもばあちゃんも居なかったから…」

突然ふんわりと和の身体は抱き上げられた。

「まあよい…我のことは山王さまでもなんとでも呼べ」
「は、はい…」

随分適当なんだなと思ったが、神様だからそんなことも気にしないのだろうと和は納得した。

「あの俺…男ですけど…」
「なんだ」
「その…生贄って女じゃないといけないんじゃないですか?」
「神に男も女も関係はない」

山王さまはそう言ってゆっくりと和を見た。

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