第11章 珈琲色
「ねえ、最近大野さん変じゃない?」
ニノが楽屋で小さな声で話しかけてきた。
「…おまえも気づいた…?」
「うん…なんか、映画の話決まってから変よね…?」
「ああ…」
おーちゃんは今、楽屋の隅の鏡前に陣取って台本を読んでる。
いつものように、微動だにしないでじっと本を見つめてる。
「…相葉さんも気づいてるくらいなら、皆気づいてるよね…」
「おい…」
「だって事実でしょうよ」
「そうだけどさ…」
メイクも衣装も全員終わって、後は今日の打ち合わせが始まるのを待つだけ。
潤はパソコンを広げてなんか見てるし、翔ちゃんはタブレットでニュースを読んでる。
それぞれが思い思いに過ごす時間だけど…
なんとなく俺とニノはおーちゃんの背中を見つめた。
ふと、潤も顔を上げた。
俺達の視線に気づくと、潤もおーちゃんを見つめた。
翔ちゃんもいつの間にかおーちゃんの背中を見てる。
…やっぱり、皆気づいてるんだ…
おーちゃんは、自分の世界に入っててこちらのことなんて気づいても居ない。
時々顔を上げて、鏡の中自分を見つめてはセリフをぶつぶつと呟いてる。
声が小さいから何を言ってるのかはわからない。
でも、その瞳は…
まるで恋でもしてるみたいに潤んでた