第10章 Coke scene3
くしゃっとカズヤの頭を翔さんが撫でた。
「よし…そういう話、車の中で聞かせろよ?」
「えっ…」
「だって、俺達と出会うまで、ママさんがカズヤを育てたんだからな?」
「そうそう。ちゃんと俺たちも感謝しないといけないんだからさ…」
そう…ママさんが居なかったら、カズヤは俺たちに出会えてたかもわからないんだから…
「カズヤが思い出したくないことは言わなくていいからさ…俺達にも聞かせてよ…ママさんとの思い出をさ…」
「にーの…」
ぎゅっと相葉さんがカズヤを抱きしめると、くしゃっとカズヤは笑った。
「うん…!話すよ!いーっぱい話す!」
せっかくセットしたカズヤの頭をみんなでくしゃくしゃにしてやった。
「もおお!これ、時間かかるんだからねっ!」
「はいはい…どうせ汗でぐちゃぐちゃになるんだから…」
「にーのみたいに適当じゃないの!」
「車のなかで直せよ」
「雅紀みたいに手がワックスでベトベトになっても気にしない人じゃないの、俺は!」
「…もう、短く刈っちまえ!」
「翔はいっつもそれなんだから!わからずや!」
バタバタ洗面所に駆け込んでいく背中を見ながら、俺達は苦笑いした。
「そういや、あのくらいの年のときって、格好ばっかり気にしてたもんなあ…」
翔さんがやけにオヤジ臭くいうから、爆笑した。
しばらくして戻ってきたカズヤは、やっと落ち着いた表情をしてた。
「…よし、落ち着いたな。行くぞ」
「うん。ごめん…ありがとう」
「さ、靴履いて…」
「はあい」
カツンと踵を鳴らして靴を履くと、カズヤは俺たちに頭を下げた。
「…今日は本当に、ありがとう」
その姿に、出会ってからの時の流れを感じた。
「…さ、行こう」
「うん!」
元気な声が家に響いた。
リビングのスケジュールボード
今日の予定は4人が一緒
だから、大きな木の葉っぱの部分に予定が貼ってある
また今日と同じ明日がくる
4人とも、明日以降の予定はバラバラだけど…
でも同じしあわせに向かって歩いている
これからも、このスケジュールボードに…
4人の予定を書き込んでいこうな
カズヤ、前に進め
おまえの未来は、すぐそこにある
【END】