第8章 ディープパープル
あの日、子犬のように泣く声が聞こえた。
だけど、次に会った時はもう普通に戻ってた。
なにか言いたそうにしてたけど、それでも堪えてお前は笑ってる。
わかってるよ…
俺のやってることは、おまえの一番大事なものを壊すこと
でもね
俺は早く壊れたいんだ
壊して壊されて…
無になりたいんだ
「大野さん…」
隣に座るおまえが、俺の服の裾をきゅっと掴む。
「なあに?ニノ」
「…ううん…なんでもない…」
きゅっと唇を噛み締めて俯くおまえは美しい
残酷なほど美しい
でも、おまえは彼のもの
……おまえが壊さないなら、俺が壊してやる
おまえの人生に…俺の痕跡を
忘れられない痕跡を
ふと目の前のソファを見ると、俺の顔を食い入るように見つめる目があった。
二人はもう気づいてる。
気づいて、俺とニノを切なげな目で見つめるんだ…
もっと
壊してあげる
俺と同じ場所に堕ちよう?
「お次どうぞ~」
楽屋に満ちる暗い空気に、太陽みたいな彼の声が聞こえた。
「リーダー?次だよ?」
ポンと肩を叩く手は、温かい。
置かれた腕を辿って、彼の真っ直ぐな瞳を見つめ返す。
「ん?どうした?」
「…ううん。なんでもない…」
つっと腕を辿って、彼に縋りながら立ち上がる。
「ありがと…相葉ちゃん」
その胸に凭れるように見上げると、きれいなガラス玉みたいな瞳の奥が揺れた。
微笑みかけると、ぎこちなく微笑み返す
次は…君だよ
【END】