第7章 グレイ scene5
「晩御飯、何にします?やっぱり引越しそばなのかな?」
「いやいやいや…ちょっと待てやおまえ…」
無理やりキッチンに二人で入ると、案外片付いている。
斉藤くん、やるな…
「これならすぐなんか作れそうですね。材料用意してきたんですぐ作ります」
「は、はあっ!?」
抜かりなく、キッチンに入れておいた買い物袋。
斉藤くんは気を利かせて、冷蔵庫やら収納庫やらにそれを収めてくれたみたいだ。
ふむ。使いやすい。
真新しいお鍋にお湯を沸かしていると、大野さんはやっと持ち直したみたくて、IHのスイッチを消してしまった。
「ニノ!ちょっと待てや!」
「ん?なんですか…お腹減ったんですけど…」
「いやいや、ちょっとここ座れや」
キッチンには小さな窓が付いていて、その横にはスツールが置いてあった。
大人しく座ると、大野さんは俺の横で仁王立ちしている。
「どういうつもりなんだよ」
「え?なにが?」
「なにが?じゃねえよ!なんでおまえの荷物まで片してんだよ」
「え、だって…私、ここに住みますから」
「は、はあっ!?」
「あなたいいって言ったじゃない。福岡で」
「ふ、福岡?」
ま、嘘だけどね。