第7章 グレイ scene5
ばちゃんって音がキッチンからした。
「ぬあうおおおお~」
いつものごとく、マヌケな雄叫びが聞こえた。
「こぼしたああ~」
やっぱりね…よく毎日パック入りの牛乳こぼせるよね。
俺、ある意味尊敬するわ。
いつもの事だから、そんなことは放っといてゲームに集中する。
今日はいつもよりも人の集まりが悪い…
「あ~今日のイベントクリアできっかな~…」
ネットゲームに夢中になってると、後ろをヒタヒタと歩いてる音がした。
振り返ってみたら、雑巾を持って鼻歌歌ってる人が居る。
「牛乳ぞうきん…」
くっさい思い出が蘇ってくる。
小学校では、牛乳を染み込ませた雑巾は忌み嫌われていたものだが…
あの人なんで鼻歌歌ってられんだろ…
「和也ー?」
「ああーん?」
「風呂どうする?先入ってこいよ」
「いいよ。このイベントやっちゃいたいから。あんた先に入ってきなよ」
「は?んなこと言って、また風呂入んねえんだろ。だめ」
「うっさいな~…ちゃんと入るよ」
「ダメダメ。ほら、代わりにやっといてやるから、行って来い」
「なあにすんのよー…」
コントローラーを取り上げられて、相葉さんはガッツリと隣に座り込んだ。
「お、いいじゃん…今日イベントなんだ」