第7章 グレイ scene5
「んーっ…今日もいい天気…」
パンパンとシーツのシワを伸ばすと、物干し竿に掛ける。
今日は天気がいいから、よく乾きそう。
「花粉もまだ飛んでないし…いい気持ちっ…」
毎年、春になると俺は花粉でずるずるになる。
でも今年は大丈夫。
俺の側には、あの子がいる。
「ましゃき~…おはよお…」
そう、あの子…
「おはよ!さとこっ…」
「はあ?俺は智だよ?」
「あっ…間違えた」
「だれそれぇ…?」
「誰って…智じゃん?」
「は?」
「CMで…ほら、女装したでしょ?」
「ああ…あれね…」
ポリポリと鼻の頭を掻いている。
「そんな可愛くもないだろ…あれ…」
「何言ってんのさ!すっごい可愛かった!俺、惚れ直したもん!」
「ほ…惚れ直したって…」
今度は真っ赤になって、パジャマの裾をいじいじと弄りだした。
「なんだよ…ホントのことだろ?」
「ば…ばか…」
タタタと駆け出してリビングを出ていった。
照れてる…
むふふ…可愛いんだから…
なんだか鼻歌が自然に出て来る。
ふんふんうたいながら、洗濯かごを持ってリビングに入った。
洗濯かごは、いつも洗面所に置いてるから入ると、智が歯を磨いていた。
まだ顔が赤い。