第5章 こひくれない
新年が明けて、休暇に入った。
今年はまだ福岡のコンサートが残ってる。
海外に行くことも考えたけど、なんかあったらいけないから今年は我慢した。
国内の旅行を終えて自宅に戻ってくると、コンシェルジュが俺を呼び止めた。
「櫻井様、お届け物がございます」
「え?俺に?」
コンシェルジュが微笑みながら差し出してきたのは、封筒だった。
「なんだろ」
中を見たら、芝居のチケットが入ってた。
「これは誰が持ってきたんですか?」
「野本様という方でした」
「のもと…」
俺達のマネージャーの1人の名前。
「スーツを着た男性でした?」
「ええ。名刺もお預かりしております」
「ああ…ありがとう」
ジャニーズ事務所の名刺…
だから預かってくれたのか。
「どうも」
スマホを取り出して野本に連絡を入れた。
繋がらなかったので、そのまま部屋に戻る。
荷物を片しているときに、スマホが鳴った。
「もしもし?」
電話は野本からで、用件を聞かれた。
「え?だって封筒…」
『封筒?』
「おまえじゃねえの?」
『なんのことでしょう…』
俺は封筒の説明をしたが、野本には心当たりがないってことだった。