第3章 ドキドキする理由
ジョエルの横顔は、恋する乙女の顔だった。
プレイラはどうしたものかと頭を抱える。
十中八九、ファンドレイがジョエルを睨んだのは照れ隠しだ。
至近距離でジョエルの胸を見たに違いない。
(違う意味でお説教だわ…!)
ぎゅっと拳を握る手に力が入りかけて、プレイラはハッとした。
これはいけるかもしれない。
彼女の頭の中で、鐘がリンゴンと鳴った。
(ファンドレイとジョエル…意外に合うんじゃないかしら…!)
プレイラは二人が合いそうな点を指折り数える。
まず、ファンドレイはいつでも笑っているような女が苦手だ。
ジョエルは普段無理して笑っているので、彼の前では素が出せるはず。
そしてジョエルはお喋りな男は好きではない。
圧倒されてしまって疲れるというのだから、無口なファンドレイであればその心配はない。
目つきの悪いファンドレイは怖いとよく言われるが、睨まれてドキドキするのだ、全く問題ない。
気になるのは今の身分差だが…ジョエルの両親のことを考えれば、おそらくクリアできるはず。
後は、ジョエルがいかにファンドレイにアピールできるか、ということ。
「それで――ジョエルは、私に具体的に何を聞きたかったの?」
「え…」
「そうね、例えばの話でいいんだけれど」
侍女に入れてもらった紅茶を飲みながら、プレイラはジョエルが口を開くのを待った。