第1章 幸せの種、貰いました。
「愛さえあれば、コイツは立派に育つじゃろう…。」
老婆は、更にそう呟いてさっさと去っていってしまった。
「何だ…コレ…?」
楽は訳も分からず、ただ手の中のソレを見ていた。
「ま、こんなモンだろ。」
家に帰るなり、楽は例の種を植えた。
彼は正直、幸せが訪れるだとか信じてはいなかった。
それも無理はない。
怪しげな老婆に貰ったものをすんなりと信用して使える者など数少ないだろう。
まして、“幸せが必ず訪れる種”というのだ。
怪しいにも程がある。
だからこそ、楽は信じていなくても、それがどんなものなのか確かめたかったのだろう。
簡単に言えば、種を植えたのは興味半分といったところだろうか…。
—だがしかし、彼はまだ知らない。
この種が後に、自らの運命を変えるとは…。