第1章 幸せの種、貰いました。
雨上がりの空、まだ地面には水溜りが残っている。
そんな道を仕事の疲れを背負って、とぼとぼ歩く一人の男がいた。
超人気アイドルグループ『TRIGGER』のメンバーであり、抱かれたい男No.1の八乙女 楽である。
「はぁー…。」
彼が重たい溜め息をつくと同時に
“ガタン!!”
という大きな音がした。
驚いた楽が周囲を見渡すと、すぐ近くの横断歩道で黒いずきんを深々と被った、どこか怪しげな老婆が転んでいるのを見つけた。
恐らく水溜りで滑ってしまったのだろう…。
「大丈夫ですか?」
彼はすぐさまその場に駆け寄り、老婆を起こした。
するとその老婆はずきんの中からしわくちゃの笑顔を見せて、
「アンタ、優しい心を持っておるなァ。
ホレ、“幸せが必ず訪れる種”だ。コレをすぐに植えてくれ。
お礼だよ。」
と、何の変哲もないただの種のようなソレを楽の手に収めた。