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蒼夜に共に

第1章 蒼夜に共に


<side 風間>

衝動は不意にやってくる。
身体中を這い回る様な熱い欲望が、解放を求め渦を巻く。


丑三つ時、開け放した窓からは、虫達の囀りが聞こえるが、今の俺の耳には届かない。


浅ましい真似などしたくはない。
だがこの昂りを、抑える術など有りやしない。


隣では千鶴が規則正しい寝息を立て、幼子の様な寝顔で眠っていた。


起こさぬ様にそっとその場を離れ、気を紛らわそうと縁側に座り置いてみても、一度擡げた欲望は、簡単には引きそうには無い様だ。


はぁと溜め息を吐いて空を睨む。


『…風間、さん?』


その時不意に声がして、振り向くと千鶴が眠そうな目を擦りながらこちらへと歩いてきていた。


『…どうした、悪い夢でも見たのか?』


『ち、違います…!
何だか目が覚めちゃって…そうしたら風間さんが居ないから…』


『ほう、俺が居なくては眠れもせぬか?』


『ひ、一人でも寝れます…!
だ、だけど急に居なくなったら…心配、します……』


ぎゅっと俺の裾を掴んで、俯く千鶴。


幼なじみた行為なのに、笑みが無意識にも広がって行く。
気付けば俺は、千鶴をそのまま押し倒していた。


『か、風間さん…?』


『…何だ?』


『えっと……その、状況がうまく、飲み込めないんですけど…』


散らばる黒髪が月明かりに照らされる。
寝間着の袂も蝶の様だ。


『そのままで良い。
お前は何も分からぬまま…啼いていろ。』


『な、啼い……?!』


暗がりの中でも分かる程に桃色に染まった千鶴の、桜色の唇を覆う。


『ん……っ……』


柔らかな感触と漏れ得る吐息に、ぞくぞくと肌が粟立つ感覚に身震いがした。


吐息も、鼻に掛かる声までもが俺好みとは、なー……

















『……っ…は……あぁ…』


重なる肌から生まれる快楽。
互いの熱が、混じり合う。


冷たい空気に晒した肌を、秋風が撫でていく。
先程までは気付かなかった、虫達の輪唱を近くで感じながら、千鶴の体温に酔いしれた。


秋の夜は長く暗い。
その夜を堪能しよう、朝が来るまで蒼夜の影を重ねながら…










fin.
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