第2章 楓の口付け(黒バス・赤司征十郎)
「ん…あれ、私……?」
「あぁ、起きたのか」
「あ、かし…くん?」
洛山高校の校門のすぐ側に大きな楓の木を見つけて、その下にベンチがあって。
鞄には読み掛けの恋愛小説。
それで確か。
私は一人でここで続きを読んでいたんだけれど。
「通り掛かったら本を抱いて君が眠っていたものだから、つい心配でね。余計なお世話とは思いながら肩を貸させてもらったよ」
「う、ううん!余計だなんて…!ありがとう、日射しが気持ちよくて寝ちゃってたんだね」
そう答えると赤司くんはニッコリと笑ってくれた。
格好良くてなんでも完璧にこなして、それでいて優しくて。
私なんかには勿体無いくらいの人。
「このまま一緒にいても…?」
「あ、うんもちろん。そもそも私赤司くんの部活が終わるのをここで待っていたから」
土曜日は午前中バスケ部の練習がある。
普段は部活終わりの彼が私の家に来てくれるのだけど、今日は天気も良くて外に出たい気分だった。
でも、迎えに来た私がこんなところで寝こけていたら意味がない。
赤司くんが気付いてくれなかったら行き違いになってしまっていた。
「見つけてくれて良かった」
「俺がに気付かずに通り過ぎるなんて有り得ないよ」
「うん…ありがとう」
「それにしても綺麗に色付いているな」
赤司くん見上げた先には真っ赤な楓。
赤司くんと同じ色。
私がここにいようと思ったのも彼と同じ赤が目に留まったから。
暖かな日射しを優しく遮り温もりを感じさせてくれた楓は彼に包まれている様な錯覚を起こした。
だから安心して寝ちゃったんだろうな…。
思い切ってそれを赤司くんに伝えてみる事にした。
そうしたら、どんな表情を見せてくれるだろう。
子どもみたいだと、笑うかな。