Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第30章 僕達の貯金箱
珍しく営業で外回りをしたせいか、疲れた足を引きずって家に帰った俺を、青ざめたクマの置物と、クマ柄のエプロンをかけた智が出迎えた。
「おかえり〜♪」
「お、おう…、ただいま…」
「ね、ね、ちゅーは?」
早速お強請りをする智に、チュッとキスをする。
…けど、俺の意識は、俺達のキスシーンをジッーッと見つめる“青ざめたクマ”で…
「なあ、これは何かな?」
キスに満足して踵を返そうとした智を引き止めた。
「あ、これ? これはね〜」
智が“青ざめたクマ”をヒョイと持ち上げ、俺にその背面を向けて見せた。
「貯金箱になってるの♪」
「へー、貯金箱ね…」
って、何で?
「あのね、僕お金貯めようと思って」
うんうん、それはいい心がけだ。
「でもね、僕のバイト代なんて知れてるじゃん?」
確かにな…
絵画教室とダンススクールの講師を掛け持ちしたって、智の給料は、俺の三分の一あるかないかだ。
決して多いとは言えない額だ。
「でね、僕考えたの」
「何を…考えたのか…な…?」
やっば…、嫌な予感しかしないから、自然と顔が引き攣る。
「あのね、翔くんにも協力して貰おうかな〜なんて♪」
やっばりか…