Wonderful Life〜素晴らしき日常〜【気象系BL】
第22章 僕達のカレンダー①
楽しい時間はあっという間に過ぎる…ってのは、正に本当で…
気付けばラストオーダーの時間が迫っていた。
その時、どこからともなく歌が聞こえ…
店員が何やら花火の刺さったプレートを運んで来た。
「おい、今日誰か誕生日だったっけ?」
俺は目の前の生田に聞くと、そのプレートの行方を目で追った。
「はあ? 櫻井、それマジで言ってんの?」
「いや、マジだけど?」
「嘘だろ、おい…。今日お前の誕生日だろ?」
「えっ、お…れ…?」
驚き、固まった俺の前に、花火の刺さったプレートが置かれ、その時になって俺は、今日が自分の誕生日だったことを思い出した。
「嘘だろ…、マジか…」
あちこちから飛び交う祝いの声に、俺はテンションが上がるどころか、下がる一方で…
「ごめん、俺…帰るわ…」
俺はハンガーにかけられたコートを引っ掴むと、呆然とする同僚達には目もくれず、ブリーフケースを手に店を飛び出した。
駅までの道すがら、スマホを手に何度も智に電話をかけるが、一向に繋がらない。
電話が駄目ならLINEを、と…メッセージも送ってみるが、反応はなし。
「怒って…るよな…」
あのデカいハートマークの意味に、今頃気付くなんて…
「あーっ、くそっ!」
俺は電車に乗るのを諦めて、丁度横を通り過ぎようとしたタクシーに乗り込んだ。
一分でも早く家に…智の元に帰りたかった。