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【企画SS】栗より甘い、【HQ】

第1章 栗より甘い、


驚いた顔の那奈を引き寄せ、もう一度柔らかな唇の感触を確かめた。
先ほどより少し長く、彼女の唇の熱を感じる。
そっと彼女を解放すると、今までに見たことがないくらい顔が真っ赤になっていた。

「あっ、お、ちょっ、待って……!」
「……柔らかかった…」
「!!」

もっと気持ちを出そうと思って、思ったことを口にしてみたけれど、那奈には「そういうことは言わないの」と言われてしまった。
素直に口にするだけではダメなようだ。
……なんとも、難しい……。

「でも…嬉しかった。ありがとう、青根くん…」

顔を真っ赤にさせてそう言う那奈がとても可愛く思えて、仕方ない。

「俺も、嬉しかった。那奈」
「!!」

何かが爆発したみたいに那奈が叫んで、那奈の顔がさらに赤くなった。

「えっと、先に進みたいって言っといて勝手なんだけど……青根くん、ゆっくりでいいから…じゃないと私の心臓がもたない…」
「……?分かった。那奈がそう言うのなら」
「!!」
「……??」

返事をしただけなのに、那奈は何故か恥ずかしそうにしている。
女心というものは、本当に難しいものだ。

「青根くん…、もしかして、無意識…?」
「……?」
「名前、下の名前で呼んでくれてるの、無意識?」
「……!」

言われて、自分が彼女のことを速水江ではなく那奈と呼んでいたことに気付く。
指摘された通り無意識だった。
意識した途端、自分がとてつもなく恥ずかしいことをしたような気がして、顔が熱くなった。

「あ…やだ、私、野暮なこと聞いた…ごめん!」
「……(ふるふるふる)」

今まで、お互い苗字で呼び合っていて、二口にも「いつになったら名前で呼ぶんだよ」なんてやかましく言われていたのに、こんなに突然名前を呼ぶ日がくるなんて思ってもみなかった。
いつかその可愛い名前を口にしたいとは思っていたものの、いざ口にしてみると気恥ずかしさの方が勝ってしまう。

「…私もさ、高伸くんって呼んでもいい?」
「……!!」

ふいに呼ばれた自分の名に、かぁっと全身が熱くなるのが分かった。
家族以外に呼ばれたことのない、自分の名前。
それが大好きな那奈の口から紡がれるのだから、嬉しくないはずがない。
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