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【企画SS】栗より甘い、【HQ】

第1章 栗より甘い、


体が自然に動いていた。
考えるより先に、俺の腕は速水江の小さな体をすっぽり包んで、ぎゅっと抱きしめていた。

「あお、ねくん…」
「……すまなかった。気持ちに、気が付いてやれなくて」

抱きしめる力を少しだけ強くすると、それに応えるかのように、速水江がぎゅっとしがみついてくる。
胸のあたりがじんわりと温かくなるのを感じた。

次第に柔らかな速水江の感触が鮮明になってきて、恥ずかしくなって思わず体をそらしそうになった。
けれど、それではまた彼女を傷つけてしまう気がして、なんとか堪える。
体中の血が沸騰したような気分だ。
今自分はどんな顔をしているのだろう。
恥ずかしくて仕方がない。

「……私こそ、ごめん。青根くんに言えばよかったね、私の気持ち。察してもらうの、待ってるだけじゃダメだよね」
「……(ふるふる)」

速水江の目にたまった涙が、つぅっと静かに流れて行った。
それを見て、綺麗だな、なんてことを思ってしまう。
でももう涙なんか流させたくない。
もっと速水江の気持ちを汲んであげられる男になりたい。

じっと見つめた先の瞳は、まだ少しだけゆらゆらと揺れている。
熱っぽい視線は、何を求めているのだろう。
こういう時はどうすればよいのだったか。

『いいか、青根。沈黙が訪れて、見つめ合う時間が10秒以上あったら、それがキスの合図だ!』

ふいに、二口の声が聞こえた気がした。
恋愛指南だなんだと時々口やかましく言っていたような気がする。
そんな言葉を思い出すということは、今がその時だということだろうか???

人気のないところとはいえ、ここは学校だ。
どこで誰が見てるか分からないし、初めての、ことなのに、こんな場所でいいのだろうか???

考えあぐねていると、ふいに下から引っ張られる感覚。
首の後ろに回された速水江の腕はひやりと冷たかった。
ぐっと顔と顔が近づいたと思った時には、唇に柔らかいものが触れていた。
音もなく静かに離れて行ったが、唇の熱は確かに感じた。

「……っ?!?!」

動揺する俺をよそに速水江は嬉しそうに微笑んでいる。

「奪っちゃった」

唇に人差し指を押し当てて、速水江はいたずらっぽく笑っている。
瞬間、たまらない気持ちになる。


「……っ、那奈」
「えっ」
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