第16章 Op.16 イブの晩餐
ウィスタリアの感謝祭が過ぎ
城下はクリスマス一色に染まっていった。
ちょうどその頃
レオナの3枚目のアルバム
クリスマスセレクションがリリースされた。
街中にはレオナの歌うクリスマスソングがいたるところで聴こえ
テレビでも連日彼女の姿が映った。
スタジオへ向かう車が事務所の前に止まり
一足先にレオナは車内に乗り込んでいた。
マネージャーのケイは「用事があるから少しだけ待っていて欲しい」と言ったきり、もう15分以上経っている。
(大丈夫なのかな…次の予定)
レオナがそわそわして外を見やると
ケイが走って車の方へやってきた。
「すいません!すぐ出して下さい!」
ケイが飛び乗り、車はすぐに出発した。
「遅かったね…何かトラブル?」
「いえ……あの……」
ケイは乱れた呼吸のまま途切れ途切れに答える。
「年明けのワールドツアーの日程が決まりました……4日からまずシュタイン、その後周辺の国を2週間ペースで周り、大陸へ渡ります」
「え」
覚悟はしていたものの、規模の大きい話に少しだけ尻込みしてしまう。
「……思いのほか、という言い方は失礼ですが、とにかく海外での売上セールスがかなり好調です。各国で例のオーディション番組の上位入選者とのコラボも企画されているようで…」
ケイは鞄から分厚い資料を覗かせた。
「あ、それがワールドツアーの資料?」
手を伸ばそうとしたレオナに、ケイは待ったをかけた。
「え?」
「レオナさん……大事なのはここからです」
ケイは資料を出さずに自分の手帳を取り出した。
分厚い手帳は様々なメモや付箋が貼ってあり、自分の忙しさを物語っているようだった。
「これ……!見て下さい!!」
ケイは12月の予定表を開いた。
レオナは目線を落としてその手帳を見る。
「………」
「驚きで声も出ないですか?!」
「……いや、ケイ……汚くて読めない」
ケイが後ろへのけぞって倒れる。
「よく見て下さいよー!24日!!!」
「え?」
目を凝らすと、夜入っていた生ライブ放送に斜線が入っている。
ケイは目を光らせて言った。
「……代役ねじ込んで、予定開けました!」