第14章 Op.14 ペナルティ【R-18】
「お前まで何言ってる!」
役員の怒号が響く中、ケイは躊躇いがちに口を開いた。
「正直……アルバム3枚出すだけでも超過密スケジュールなのに、その直後にワールドツアーなんて組んだら…レオナの身体が心配です」
「ケ、ケイ……」
不安そうに瞳を揺らすレオナにケイは少しだけはにかんだ。
「アーティストの体調管理はお前の仕事だろうが!」
「もちろん、俺も最善は尽くすつもりですが…」
「……大丈夫です、やります」
静かに響いたその声に
その場の全員がレオナに注目した。
「やりますよ。アルバムも、ワールドツアーも。やらせて下さい」
「レオナさん…」
ケイは心配そうにレオナの顔をのぞく。
「…いいのか、おそらく今から半年は確実に休日無しだぞ」
クロードの言葉にレオナは黙ってうなづいた。
「ではこの企画書の通り話を進めていきます。アルバムのジャンルは……」
その後、事務的な話が延々と続けられていった。
「大丈夫ですか?」
会議終了後、ケイは心配そうにレオナに尋ねた。
「大丈夫だよ!私頑張るし!」
「……」
クロードは黙っている。
「この後って何かあったっけ?」
「いえ、今日はもうこれで終わりで…明日11時からスタジオでレッスンです」
「わかった、ありがとう」
ケイとは会議室前で別れ、レオナはクロードと共に社屋を出た。
クロードの乗ってきた車に二人で乗り込み家路へ着く。
「無理だけはするなよ」
クロードは視線を前に向けたまま言った。
「……」
レオナは昼間の出来事を思い出していた。
言わなくてはならない。
「ねぇ…クロード」
「ん、なんだ」
「……私、クロードの家を出ようと思うの」
ほんの一瞬の沈黙だったが
それはとてもとても長く感じる沈黙だった。
「…そうか」
「けっ、契約のことはもちろん忘れてな…」
「別に構わない」
「…え?」
「別に、一人で住みたいなら止めない」
「あ…うん……ありがとう」
意外なまでにすんなりと認めてくれたことに
レオナは少し拍子抜けしてしまう。
「…で」
「ん?」
「…部屋決まったのか?」