第11章 Op.11 真夏の夜の調べ・1
「…んだよ、やりづれぇな」
止まない歓声の中
舞台袖でシドが眉根を寄せている。
「…確かにこの後はやりづらい」
レオが同情の視線を送る。
「しかもソロ」
「しかも現代曲」
ノアとカインが口を揃えて突っ込む。
「シド、朗報です。休憩をはさむそうですよ」
ジルが後ろからやってきて声を掛けてきた。
「…ちっ、さっさと終わらせてぇ」
苛立ちを滲ませたシドは舞台袖の椅子にどかっと座った。
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「ご苦労だったな」
王宮内控室。
待っていたクロードが次の衣装を用意していた。
「最後にジャズのナンバー歌うんだろ?」
クロードは黒のオールインワンを出してきた。
「かっこいいね、これ」
オフショルダーのオールインワンは
大きめのフリルが胸周りを囲っていて
適度なセクシーさとラグジュアリー感を出している。
「あと…アクセサリーは少し『外す』方がいいだろ」
そう言ってクロードは
ウィスタリアでも有名なジュエリーブランドのコスチュームジュエリーを出してドレッサーの前に広げた。
キラキラしたおもちゃ箱から飛び出したようなアクセサリーが目に飛び込む。
「かわいい」
「これと…これの組み合わせなんてどうだ」
少し大ぶりなデザインのネックレスをレオナの胸元にかけ
クロードは後ろの留め金をつける。
首元でクロードの息遣いを感じ
少しだけ鼓動が早まる。
「そういやずいぶん、ルイと仲がよさそうだったな」
その言葉に今度は心臓を掴まれるような衝撃が走った。
「え、そうかな…息が合ったからじゃないかな」
「……王位継承者とスキャンダルだけは起こすなよ」
その冷たく放たれた言葉に
胸の奥がズキリと痛む。
先日スタジオで唇に落とされたキスを思い出す。
(あれは…気まぐれだよね…)
「…ないない、ルイは私なんかに興味なさそうだもん」
笑ってごまかすレオナのことを一瞬だけ見つめると
クロードは、下ろしていたレオナの髪を結いあげた。
「お前が有名になって利益を叩きだして…俺への恩を返し終わったら好きにするといい」
「……」
レオナの髪が結いあげられた頃
休憩の終わりを告げる鐘が鳴り響いた。