第10章 Op.10 スタジオリハ
昼過ぎ。
レオナの枕元で、携帯電話が鳴る。
着信の相手を確認せず
シーツの中から手を伸ばして電話を取る。
「…も…しもし」
けだるい声がシーツの中で発せられる。
『レオナさん?ケイです…具合、大丈夫ですか?』
「ごめんなさい…急に休んだりして……きゃっ!」
『もしもし?レオナさん?』
「ご……ごめんなさい…大丈夫です……はい…わかりました。13時に事務所へ行きますね」
電話を切ったレオナは、シーツの中で身をよじって声を上げる。
「ちょっ……クロード!」
シーツを大きくめくって起き上がると
クロードはイタズラな笑みを浮かべて寝そべっていた。
ケイとの電話中にイタズラしてつけた腰元の赤い印を指でなぞり、クロードはふっと微笑む。
「昼飯、食べに行くか」
「うん。…クロード仕事は?」
「今日は無い。飯の後、事務所まで送る」
起き上がってクロードはシャツを羽織る。
「…服、スタイリングしてやるからこっち来い」
「えっ、いいよ自分で選ぶから」
「……いや、隠さなきゃいけないところが沢山あるからな」
レオナはベッドの上で
顔を赤くして固まっていた。
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クロードに事務所まで送ってもらうと
レオナは中でケイと合流した。
「なんかすみません…レオナさんの体調管理もマネージャーの仕事だと社長に怒られました…」
「えっ?だ、大丈夫だよ本当に!ごめんね…心配掛けて」
厳密にいえば体調が悪かったわけではなかったため
レオナは僅かな罪悪感を感じた。
「さっそくなんですが…昨日、王宮で『夏の音楽祭』に関する打ち合わせをしてきました。こちらが資料です」
ロビーのソファに掛けると、レオナは渡された資料に目を落とした。
「……カインって、ドラムできるんだね…」
「やっぱそこ、一番驚きますよね」
ケイは苦笑して答えた。
「あと、ルイとデュオもできるんだ…」
レオナは少しはにかんだ。
「あ、それに関してルイ様から直接打ち合わせをしたいと午前中に連絡がありました」
「え?直接?ルイから?」
「はい…もうすぐ来ると思います」
突然のルイの来訪を知らされ
自然とレオナの胸は高鳴っていった。