第8章 Op.8 After Squall【R-18】
夏を予感させる突然のスコールは
激しい音を立てて
雨粒を地面に打ち付けていた。
「今なら…泣いても叫んでも…バレないぞ」
耳元で囁くクロードの言葉に
レオナの胸は熱くなり
嗚咽を上げて泣いた。
二人は抱き合って
そのまま雨に打たれ続けていた。
少しだけ雨足が弱まったものの
まだ止むことのない雨の音が
外から聞こえる。
クロードは
水をたくさん含み重たくなったレオナの服を
ゆっくり脱がせた。
レオナは抵抗しない。
目は赤く腫れ、虚ろなままだ。
「風邪引くぞ…風呂、入れよ」
僅かに開いているバスルームの扉からは
先ほどクロードが準備してくれたのか、湯気が立ち上り漏れてきている。
「………」
レオナは黙ったまま、バスルームの中へと入った。
バスタブには湯船が張られており
熱いシャワーが注ぎ湯気を上げている。
「………」
レオナはそのまま
降り注ぐシャワーを浴びた。
冷えた身体に
少し熱めのお湯が心地よい。
思えば自分は
常に「必要とされていない」と思っていた。
いてはいけない存在だと思っていた。
なのに。
今、こうして
多くの人に受け入れられ
必要とされ
温かく迎えられている。
契約上のことだとは重々承知の上だが
それでもクロードがかばってくれたことは
自分にとって
ここに帰ってきていい、と
許可できるきっかけにはなった。
もう、あの「悪魔の家」に戻らなくていい。
ここに、いていい。
それが例え、契約だったとしても。
レオナはウィスタリア城下に来て
初めて、本当の意味で安堵を手に入れた。
かたん、
背後で扉の開く音がした。
振り返ろうとしたのと同時に
後ろから抱きすくめられる。
冷えた肌がぴたりと密着する。
しかしすぐに
同じ温度が共有されていく。
向き合おうと、レオナは身をよじる。
熱い湯を浴び、流れ滴るクロードの顔が
切なげに歪められている。
「ク、ロード……?」
クロードはそのままレオナを壁に押し付け
勢いよく唇を奪った。
「んっ………」
湯気の立ち込める中
角度を変えて何度もついばまれる。
あっという間に、舌が口内を犯す。