第6章 Op.6 急遽
ルイと再会できたことが
レオナにとっては思いのほか嬉しく、元気が湧いてきた。
(少し冷たい印象の人だったけど…優しいんだな)
移動中の車の中、レオナは少しほくそ笑んだ。
「レオナさん、にやにやしてますよ」
「えっ…」
ケイに指摘され、慌てて顔を戻す。
「でも無理もないですよね…国民のアイドル、ルイ様とカイン様に会えて…ルイ様には伴奏までして頂けたんですからね」
「…うん。ルイが私をあの時選んでくれたから今の私がある…もちろん、クロードがスタイリングしてくれなかったら、舞台にすら上がれなかったけどね」
レオナは苦笑いして言った。
「そういえば、最近クロードさん会いませんね、忙しいんでしょうか?」
「分からない…私も会ってないの」
たまに電話は来るものの
最近は電話すらない。
「…電話、してみようかな。まだレッスンスタジオつかないよね?」
「はい、大丈夫ですよ」
レオナは携帯を取り出し
クロードにダイヤルした。
RRRRR……
発信音は鳴るものの、出る気配はない。
(忙しい、のかな)
電話を切ろうとしたその時
ガチャ
(あ…)
「あ、もしもしクロード?」
「………ん…」
声が小さく、よく聞き取れない。
「もしもし?クロード??」
「………ん、んん…レオナか」
発せられたその声は
眠りについていた人間のそれだった。
「もしかして寝てた?ごめんね…」
「あ、いや……構わない…」
掠れた声が、ゆっくりした口調で答える。
「…どうした」
「あ、ううん、ごめんね用はなくて…最近会ってなかったから電話してみただけ」
「…そうか……」
クロードの声は怒った様子もなく、穏やかだった。
「レオナ…」
「何?」
「今、国外に居るんだ」
「えっ?!そうだったの?!」
予想外の答えにレオナは驚きを隠せなかった。
「……明日の昼にはそっちに帰る。その後しばらくは時間ができる。お前は?」
「え?私?」
レオナはケイにスケジュールを確認してもらった。
「明日は夕方雑誌の取材、その後音楽祭の打ち合わせです」
予定を告げるとクロードは
「そうか…じゃあ夜、家で待ってるよ」
そう答えて電話を切った。