第2章 Op.2 原石研磨
王宮のパーティが終わり
来賓たちはそれぞれ帰宅の途に就いた。
「さて、俺たちも引き上げるとするか…」
クロードはレオナの顔をふっと見下ろすと
「どこまで送ればいい?今日、ホテル取ってあるんだろ?」
「え?あ…うーんと…」
レオナは目を泳がせ沈黙した後、
思い切って口を開く。
「泊まるとこ…ないんだよね」
「は?うそだろ?」
ばつの悪そうな笑みを浮かべたレオナは
「あ、でも何とかするから大丈夫…」
そう言って王宮の正門の方へと一人歩こうとした。
「おい、ちょっと待てって」
クロードがレオナの肩を掴む。
「この時間で空いてるホテルなんて城下にはないぞ?バスも全部終わってるし…お前、家遠いんだよな?」
家、という言葉にさっと表情を曇らせたレオナは
「…ほ、ほんとに大丈夫だから…」
クロードから離れようと身をよじった。
しかしクロードの手はレオナの肩をがっちり掴んだまま離さない。
「家…帰れねえのか」
「……っ」
レオナが見上げると
クロードが切なげな眼差しで見下ろしてくる。
クロードはそのまま
レオナの頬に手を添える。
「…?」
クロードの手の温度が
頬に伝わる。
夜風が吹きぬけ、身体を冷たくさらっていく。
クロードの手だけが、ほんのり温かい。
「……レオナ」
「……は、い」
ぎこちない返事をすると
クロードはふっと微笑んだ。
「……とんだ家出猫を拾っちまったな」
「い、家出ね…こ?」
するとクロードは突然
レオナの膝裏に腕をいれたかと思うと
「きゃあっ!」
レオナの身体を軽々と抱きあげた。
「…家出猫、かわいそうだからうちに連れて帰る。いいか?」
「…えっ?」
それは
クロードの家に連れて行かれることを意味していた。
「え、でも…そんな」
「大体今お前が身につけてるもの、全部俺のだから」
「……」
事実をつきつけられ、レオナは押し黙る。
「それに今日はお前に散々貸したんだ…これからお前に、落とし前つけてもらうから」
「え、どういう意味?」
クロードの瞳があやしく光った。
「…大人の『落とし前』のつけ方、だよ」