第20章 Op.20 Interval
北米ツアー中の負傷により
突然表舞台から消えたレオナをめぐって
世界中から様々な噂が囁かれていた。
死亡説、重傷説
陰謀説、妊娠説
しばらくは面白おかしく騒ぎたてていたマスコミやネットも
レコード会社からの正式な引退宣言を受け
徐々にその白熱報道に幕を引いて行った。
ウィスタリア国内はそれと入れ替わりに
カインの正式な王位継承の宣言と
プリンセスとの婚約というニュースでにぎわっていた。
クロードは何事もなかったように
再びスタイリストやデザイナー業をこなすようになった。
カインが王位を継承することが決まり
ルイはハワード領の統治に専念することになった。
それに合わせて
拠点を王宮からハワード領の屋敷へ移すことになり
続いてノアも
本格的にピアニストの道へ進むべく
海外留学の準備をしていた。
「ルイやノアがいないとカインが暴走しそうで怖い…」
ルイが王宮を去る日。
見送りに出てきたプリンセスがカインの隣で不安そうに呟く。
「おいてめぇそれはどういう意味だ」
「言った通りの意味なんだけど」
ばちばちと火花を飛ばしあうカインとプリンセスを見て
ルイはくすっと笑う。
「…心配なさそうだね」
「ルイ、引っ越して早々申し訳ないのですが、10日後の慈善事業に関する会議にはこちらにご足労賜ることになりますが」
「うん、分かってる」
ジルの言葉にうなづく。
ユーリは少し泣きそうな顔をしている。
「ユーリの紅茶が飲めないのが残念」
「俺もルイ様と女の子の話でいじれないのが残念です」
(言わなきゃよかった…)
ルイはすっと眉根を寄せる。
「冗談ですってば!」
「ユーリが言うと冗談に聞こえない」
「ねえ、ルイ…あのさ」
レオが遠慮がちに口を開く。
それは、そこにいる全員が気にしていることだった。
ルイは口角を上げ、うなづく。
「大丈夫。レオナのことは俺が守るから」
レオはほっとしたように一息つく。
「レオナちゃんさえよければ、王宮も連れてきてあげてよ。いつでも歓迎するから」
「ありがとう、レオ」
「私も…早くレオナさんの元気なお顔を拝見したいものです」
ジルもにこやかに続けた。
ルイは王宮に別れを告げ
病院に向けて車を走らせた。