第19章 Op.19 事故
連日、ウィスタリアに流れる文化芸能関係のニュースには
レオナの名前が出ない日はなかった。
テレビでは
ワールドツアーの各地での成功が取り上げられ
それは
ウィスタリア国民にとっても喜ばしいことであった。
王宮のメンバーも
日々の公務をこなしながら
テレビや新聞などのメディアで
いつもレオナのことを気に掛けていた。
クロードは王宮でのスタイリスト業やプリンセスのドレスデザインなどの仕事をしながら
レオナのツアー中の衣装デザインも手掛けており
時折ツアーに同行しているようだった。
ルイは全く気にならないわけではなかったが
かといって自分に何かができるわけでもなかったので
クロードのことは静観していた。
やがて3月になり
最後のツアー、北米ツアーが始まる頃のことだった。
少しずつ春を感じる頃になってきたが
その日の朝は、雪の日の朝を思わせるような
冷え切った朝だった。
もともとあまり朝が得意でないルイは
ぼんやりする頭を目覚めさせようと
ユーリに紅茶を頼み、私室の窓から外を眺めていた。
紅茶を頼んでまだ数分もたたないうちに
かなり慌てた様子で扉のノック音が響いた。
「…はい」
「ルイ、私です。起きていますか」
声の主はジルだった。
随分緊迫した声だ。
「…何、どうしたの」
入ってきたジルは少し呼吸を乱しながら
ルイに告げた。
「……レオナが、事故に…」
ルイの目が見開かれ
顔が一気に青ざめていった。
「……とにかく、今テレビで速報で放送されています」
ジルが言い終わるより先に
ルイは立ち上がり、廊下へ飛び出した。
…テレビのある談話室には
既に皆が集まっていた。
「あ、ルイ…」
レオはルイを案じたような顔をしている。
「……」
ノアはいつもの雰囲気を消し、真剣なまなざしを送っている。
カインとプリンセスは少し離れたところでテレビのニュースを見守っていた。
ニュースでは
北米ツアーの会場で舞台の確認をしていた時、高い所から転落して重傷を負った、と報じられている。
「ツアーは中止の方向、みたいだな」
カインは来たばかりのルイに分かるように呟く。
その時、談話室に声が響く。
「おい、ジルいるか?」