第16章 Op.16 イブの晩餐
「あ…そうですね…」
レオナが返事をしようと口を開いた時
「レオナさんは客室を用意していますから、今日は泊まっていってください」
ジルがさえぎるようにそう告げた。
「え?」
レオナは驚き聞き返したが
一番驚いた顔をしていたのはルイだった。
ジルは悟ったかのように続ける。
「ケイさんから許可を頂いています。その代わり、明日の朝ケイさんが迎えに来る予定です」
(ケイ……もう!どこまで優しいの!!)
レオナはこみあげそうになった涙を必死にこらえる。
「ユーリ、お部屋にご案内して下さい」
「はい!かしこまりましたー」
ユーリはにっこり笑うとレオナを促す。
「ジル様…ありがとうございます」
「いえ…お礼なら、ケイさんに」
「ええ、明日伝えます」
レオナはジルに深々とお辞儀をした。
「ルイも一緒に戻ったらー?」
ぼんやり立ちすくむルイに、ノアがのほほん、とした声で言う。
「え?……あぁ、うん」
ルイは少し戸惑った表情を見せたものの
ユーリとレオナの後を追うように部屋を後にした。
「ノア、あからさまな助け舟ですね」
ジルが目を細めて笑う。
「ほんとだよ…まぁ俺ならそもそも部屋の案内役を奪うけど」
レオがふっと笑いながら、3人が出ていった扉の方を見やった。
しばらく廊下を進んだところで、
前を歩くユーリが突然声を上げた。
「あっ!!」
「え?」
くるっと振り返り、ユーリが手を合わせる。
「レオナ様!ごめんなさい!!俺、プリンセスのベッドメーキングの準備、一個忘れてたの思い出しちゃった…」
「そ、そっか…大丈夫だよ、あとは教えてくれたら自分で行くから…」
「いやそれが客室はちょっと分かりづらい所にあるから…あ、ルイ様!」
少し離れた後方を歩いていたルイにユーリが声を掛ける。
「ルイ様、すいません!用事思い出しちゃって…レオナ様をお部屋まで案内してあげてくれませんか?」
「………別にいいけど」
「助かります!すいません…お願いしますね!」
ユーリは客室の鍵を渡すと走り去ってしまった。
「ルイ」
「……ん?」
「…あれ、わざとかな」
「うん…わざとだね」
二人は顔を見合わせて笑った。