第7章 マイスウィートハート【まじっく快斗】
展示室に降り注ぐ月光。
ちょうどその真下に二人の人影を浮かび上がらせている。
白い怪盗と黒い怪盗。
対称的な、二つの影を。
「ま。上がだめなら下からってね。」
「おかげで理由を知ることができましたよ、
私たちを絶対に展示室にいれるわけにはいかなかった理由が。」
『この模造品だらけの展示室だとね!』
「合金製の蓋でごまかすつもりだったんだろーけど、
それ以外の壁や床までは合金製にしてる時間はなかった。」
「水を大量に流し込むためには、
それとは別に水を貯めておく施設が必要となり
急遽地下に貯水スペースを作った。」
「おかげで水もしたたるいい男が二名と水浸しの工業施設のできあがりってわけ。
ずいぶんおおがかりだったけど入れるメンバーはかぎられてるから知りたい情報が閲覧しほーだい。」
「おかげで色々なことが分かりましたよ。
持ち主から詐欺まがいや脅迫で手に入れた本物をもとに模造品を展示。
その模造品をあちこちに貸し出しては自分の手下に盗ませ、保険金と慰謝料の両方をまんまと手に入れる。
あとで自分の展示室にわざわざ飾るのはお前たちのせいで模造品を展示するしかなくなった、と何度も相手を脅すため。」
「ま。ここは事実、砂上の楼閣だったって感じかな。」
「な、な・・」
「ああ。
なんで水中脱出ができたかつーとその道のプロと馬鹿力の合わせ技だよ。
水が流し込まれてくるあたりを全力でってね。」
「なんでこの場所にいるかは
貴方が一番よくおわかりでしょう・・唯一、本物のシュガー・スターを貴方は必ず回収しにくる。
けれど。」
ぽんとキッドが月光の下で遊ばせるのは
まるで甘い砂糖菓子、
シュガー・スター。
「予告通り。
砂糖の星(シュガー・スター)はいただいてゆきますよ、オーナー。
ご安心ください。きちんと本当の持ち主に届けますから。」
「今回はそっちに宝石はゆずるけど収穫はそれなりあったからいいかな、オレは。
たまには・・・警察に貸しを作っておくのも悪くない。
菓子だけに?」
瞬間、鳴り響く12時の鐘。
へたりこんだオーナーと遠くに聞こえるサイレン、
それとキミのあきれた視線。
そんこんなが詰まってる、これが子供心なんじゃないかな?
忘れちゃいけないあの時のキモチ。