第2章 向日葵を愛した人へ。
「あ!おばあちゃんだ!」
歩ちゃんの指差す先に一人の女性が歩いてくる、ゆっくりとした足取りで。
中森警部に毛利探偵は彼女のことを知っていた。
向日葵を前にして、涙を流していたあのご婦人を。
「おばあちゃーん!」
「あら。歩ちゃん?どうしてこんなところに?もう遅い時間よ。」
歩ちゃんは両手になにかをにぎりしめたままだ。
おそらく見せてあげようと警部たちに内緒でそれを届けようとしているのだろう。
「失礼ですがご婦人、貴女・・なにか盗まれたりはしていませんか。
しかも大量に。」
先に声をかけてしまったのは毛利小五郎だった。
毛利探偵を押しのけ、警察手帳を見せる中森警部。
「先ほどこの公園に怪盗ナイトと名乗るこそ泥が現れまして、
大量の飴をばら撒いたんです。しかも、誰かの書いた手紙に包んで。
その飴を食べてしまった子供達がいましてね。
貴女の店の飴だと証言するんです。心当たりはありまっ!!」
「これだよ!おばあちゃん!!」
早く見せてあげたかったのだろう、現職刑事を押しのけ歩ちゃんがそれを見せた。
『会いたいです。』
そう書いた、手紙。
渡すつもりもなかった、送ることもできなかった、
けれど捨てることができなかった手紙。
私のかわりに、やぶいてくれたのね。
もう、持ち続けることはないから。
捨てるのではなく・・・子供たちが待ってくれている飴細工の包み紙に、してくれたのね。
「刑事さん。」
そっと、穏やかに声をかける。
「確かにこの飴は私の作った物です、この包み紙も。
けれど、お代はもういただいているんです。
ですから・・何も盗まれてなんていなんです。」
中森警部達が?マークを浮かべる中、
「歩ちゃん。私の作った飴、どうだった?」
すごく美味しいよ!と元気な答えが返ってきた。
元太や光彦、灰原までが美味しかった、また食べたいと言いだして
周りにいる子供たち、きっと内緒で食べてしまったのだろう。
おいしいよ!
また行くね!
そんな言葉が飛び交う。
・・・清助さん、見えていますか?