第12章 傷口を抉る。そして…
並んで歩くと言っても、歩幅の違いから、少し早足になる。
沈黙が気まずい。
よくよく考えれば、私達は誰かを介して接点があるだけで、直接の関わりははあまり無かったのだ。
お互いの存在は知っていた。
けど…ここ最近で、急速に近しくなった。
自己紹介をするには遅すぎる。
だけど、自分をさらけ出すには早すぎる。
そんな感じだ。
だから、沈黙を補う術が無くて当然。
昨日の説教とは訳が違う。
私が3歩で進む間を、2歩分で済ませる烏養さんの足元を眺めていると、
「あのよ…」
と、遠慮がちに声がかけられ、
目線を下から上へとずらした。