第9章 太宰 治 「4年ぶり」
「やぁ、織田作。元気かい?」
そう云いながら語りかけている男の前には墓がひとつ
「子供達も元気なんだろうね。そうだ。今、私が働いている所に新しい子が入社したのだよ。中島敦君と云ってね、もうその子が…」
男は何かの気配を感じ云いかけていた詞を止めた
「おや…織田作視てごらん。珍しい人が来たよ。」
と云いながら気配を感じた方を視る
そこには風になびく茶髪の長髪に
黒色の長外套を着た女がひとり立っていた
「治…久しぶり。」
と女は云うと男も
「久しぶりだね。唯。」
と云った。
女はこちら側に歩いてくると、墓の前にしゃがみ
「サクノスケ…久しぶりだね。」
とぽつぽつと語り始めた
「私の今の仕事?今は無職でねェ。ポートマフィアを辞めたのだよ。…今日はここ迄だ。背後の男の相手をしなくちゃいけなくてね。また来るよ、サクノスケ。」
と女は云うと墓に背を向け男の方を視る